特攻隊に選ばれる

8月のこの時期になると亡くなったおじいちゃんの話を思い出す。

 

 

僕が子供の頃、夏休みになると、兵庫の母方のおじいちゃんの家に従妹たちと一斉に集まっていた。

僕や従妹である子どもたちはぷよぷよスマッシュブラザーズなどのゲームを、大人はお酒を飲みながら談笑をしていた。その中おじいちゃんはニコニコしながらそんな僕らの姿を見てるだけで、あまり話すような人ではなかった。

 

いつも青汁をのみながら、NHKのニュースばかり見ており、子どもの頃は話が合わない印象であった。

 

そんなおじいちゃんの家で昼ご飯を食べている時、ふとおじいちゃんに質問をした。

「おじいちゃんは子供の頃夏休み何してたん?」

 

すると、ニコニコしながら、あまり話す人ではなかったがその時の話が妙に印象に残っている。

 

 

 

「あぁ…外でカエルのおしりにストローさして爆発させて遊んでいたなぁ」

 

 

 

 

!?!?

当時と現在ではモラルもだいぶ変化しているが、たぶんカエルにストローを刺して遊ぶのは当時の標準ではない気がする(おじいちゃんはみんなしてたと言うが…)。でもあまりに衝撃で、僕にとってそのカエルの切り口が面白く、青汁NHKのおじいちゃんから一気に距離が縮まり、おじいちゃんと話したくなった。

 

そこで話に上がったのが「戦争」であった。

 

しかしおじいちゃんの口から出てくる戦争は僕がイメージしていた戦争とは少し違っていた。

 

おじいちゃんは特攻隊に選ばれていたのだ。

 

 

 

 

 

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当時特攻隊に選ばれると、国からの支援も手厚いとのこと。

配給が苦しい中でも特攻隊に選ばれていたおじいちゃんの家は国からの支援で、ある程度裕福に生活をしていたというのだ。

 

近所からは特攻隊に選ばれたことは名誉なことだと褒められ、

知り合いもすごいじゃないか!と喜んでいたとのこと。

 

「死ぬの恐くなかったの?」と聞くと

「恐くなかったね。それが名誉なことやと思っていたから。」と笑っていた。

 

結局おじいちゃんは飛行機に乗ることはなく1945年8月15日、戦争は終わりを告げた。

 

「戦争が恐ろしいのは、みんな勘違いさせることやね。」

そう言い残すとニコニコしながら、またNHKを見始めた。

 

 

 

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僕が特攻隊に選ばれる。

 

そして僕が母親から「国のために死ねるなんて素敵なことよ!」と本気で言われたらどうなんだろう?

 

僕が親友から「お前ホンマにすごいな!」と褒められたらどうなんだろう?

 

みんなが苦しんでる中、国から手厚い配給がきて、妻がその配給をおいしそうに食べているのを見たらどうなんだろう?

 

それでも僕は飛行機に乗らずに自分の気持ちを信じてつき進むことができるのだろうか。みんなを裏切ってただ一人の自分を信じれるのだろうか。

 

おじいちゃんの戦争の話は今だってずっとその根底にある問題は続いている。

 

 

 

 

 

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