僕を育ててくれたこの町ともついにお別れだ。
「また会おう!」
「コロナが落ち着いたら飲みに行こう!」
「年末旅行しよう!」
昨日、転勤に伴い最後の仕事をした。
一人一人挨拶をして、小さな約束をたくさんして、みんな笑顔で送り出してくれる。
それなのに頭は全然わかってなくて明日も明後日もこの会社にいくと思っている。
お別れをしているのに、「別れが今を話すきっかけ」でしかないような。
「寂しくなりますね」と口では言うけれど、頭の中では寂しさをまだ何一つ理解していない感じだった。
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机を片付ける。
転勤に伴う誓約書を書いていく。
端末を整理する。
普段やってない作業のためすごく異質な時にいることに気づく。
みんなは普段と同じように仕事をしているのに僕一人全く違うことをしている。
みんなの会話も僕に対してはいつもの会話や振る舞いじゃないから、僕一人がこの会社の流れから切り離されていく。
その切り離された環境は”終わり”を一番理解させるよう語りかけてくるのだ。
この環境では僕という人間は機能しなくなって、その事実だけが静かに突き付けられていた。
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別れ1つに目をやると寂しい・悲しいという感情はわいてくるのだが、次の新しい環境で待ち受けている期待や不安、市役所などの手続きが残っているという億劫さ等、意外にその先のことも冷静に考えている自分がいた。
だからなのか、別れの場であっても、マーブルがまざるように感情が一色に表現されるものではないのだ。
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表現は合っていないけど、一つのゲームが終わった。
お別れの花を抱えて新天地へ向かう。
なんて言葉にしたらいいのかまだわからないけど、きっと大切な時間だったんだと認識するとき、でもそれよりももっと誇らしい未来から思い出したい。
最後までご覧頂きありがとうございました!