後輩M

職場の後輩Mがここ最近、活き活きと輝いてる。

そんなMを見ていると、嬉しくなる一方で、「人」という生き物の恐ろしい一面を感じ取ってしまうのである。

 

 

 

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Mは、まじめで細いつぶらな瞳をしているまだ入社歴の浅い後輩だ。

Mは新卒ではなく、中途採用として入社してきたため、他社のノウハウを兼ね備えた新人として期待されていた。

 

しかし良くも悪くも根が優しいから、頼まれた仕事はなんでも「わかりました」と受け入れてしまう。そして、Mはどんどん仕事が増えて貯まり、ついにはキャパオーバーで仕事が回らなくなっていった。

 

周囲はその状態を理解していないため、Mに頼んだ仕事が全く終わっていないことに苛立ち「なんでこんなこともできないんだ!」とMを責め立てる。Mも自信をなくし、仕事中も暗い雰囲気を放つようになっていく。こうなるとどんどん悪循環に陥っていき、「彼は仕事が遅く、愛そうもない」とMに対して厳しい評価をするようになっていった。

 

 

 

 

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そんなMの転機になったのは、関連会社のトラブルだ。

Mの上司は管理職から「なぜトラブルがおきたんだ!」と責められ、その管理職も本部から責められ、てんやわんやの状態となっていた。本部から次々に指示がでて、管理職も上司もMのようにどんどんキャパオーバーになっていく。

 

いつも指示ばかりをしていた管理職も秘匿な内容が多く一般社員になかなか指示が出せない。しかし管理職も上司も作業の要領もつかんでいないため、恐ろしく仕事が遅い。どこかで見た光景だが本部からは「まだか!」と催促の連絡が何度も入ってくるのだ。

 

そんな疲弊した状況下でMが上司や管理職の仕事を手伝うようになる。

今まで仕事が遅いと思われていたMだが、作業の要領も分かっておりMがテキパキと仕事を終わらせていくのを目の当たりにする瞬間であった。

 

あれだけ厳しい評価をしていたのに、手のひらを返したように

「Mは仕事が早い」「Mはまじめな誠実な奴だ!」と絶賛の嵐に。

Mも自信に満ち溢れ、朝の挨拶からも力強い「おはようございます!」の声が職場内に響き渡るようになった。

 

 

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そんなMが絶好調の時に別の後輩が、仕事でミスを犯した。

「なんでこんなミスをするんだ!」と責められ、今度はこの後輩が自信を無くし暗くなっていく。

「彼は仕事が遅く、愛そうもない」とMにしていたような評価を、今度はこの後輩にしている。

 

 

 

1つのことで人間は大きく流れを変える。

そこには時間の積み重ねが全くないほどに右から左へ流れを変えるのだ。

それはMのように人として自信を与えるステキな機会であれば歓迎だが、無益な蔑みは何の意義ももたらさない。

その事実ほど信頼関係が生まれないことはない。

そんな薄い人間関係に時間を費やすことはないと強く思う。

 

コロナにより右往左往する時代の中の、

流れに流される組織の片隅の、

今も入れ替わり続ける目の前の人間関係の中で、

それでもひとつも動じない強い信念のようなものを僕は僕自身の中で持っていたい。

 

 

 

 

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