友人が京都に引っ越したということで遊びにいってきた。
まだ引っ越したばかりで、段ボールから何も取りだされていない部屋。
カーテンのサイズも違うし、ソファーも机もない。
部屋というくくりではあるが、まだ暮らしの姿はそこにはなかった。
とはいえここは京都。
10分も歩けば鴨川も八坂神社も現れる。
友人の部屋にかばんを置き、早速京都の町へ繰り出した。
せまい一方通行の道を、自転車も車もネジが外れたようなスピードで駆け抜けていく。
一時停止線なんか少し減速するぐらいの意味しかないみたいだ。
京都の住民と観光客が入り混じる裏街道。
道の隅に寄ってしまう僕も友人もまだ、この街の住民ではない観光客扱い。
京都の住民になるための洗礼を受けたようだ。
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それでもこれからは京都の住民!
観光客の行きそうな店でなく、もっと京都の通なところを探したくなる。
しかし通な所がどこなのか?
裏路地に入っても車に轢かれそうな僕らは、若い人達が集まる芝生が目に入り、とりあえず芝生に寝転んだ。
みんなその芝生でレモネードを飲むので僕らもレモネードを買う。
もう完全に観光気分で京都を練り歩くようになった。
これから京都に住むわけだし、どうせなら、もう2度と行かないところへ行こうと、道路脇の小さな居酒屋へ入った。
カウンターしかない小さなこの店は、先ほどのレモネードの時代を忘れたかのように、時が止まった京都がそこにあった。
大将のお母さんが刺身やら煮物を作るわけだが、コロナ防止のフェイスガードをつけており、そこだけが妙に近代的。
僕らが求めていた通がそこにあったのかもしれない。1人と観光客は入ってくることはなかった。
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友人の部屋に戻り、通とかもう関係なく、安い酒とお菓子で乾杯した。
段ボールを机代わりにして、これからの未来について話す。
まるで芸人が夢みて東京に足を踏み入れたみたいだ。
友人の玄関の渡り廊下からは、京都タワーが見える。摩天楼から景色を楽しむように、渡り廊下に出て、紙コップに入れた赤ワインを飲む。
これから巻き起こる未来を想像して、まだ何者でもない友人もゆっくりと京都の地に思い出をつくりあげていくのだろう。
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