壁の向こうのストーリーテラー

 

人間模様って非常時になるととても野生的な流れを見せていく。

 

安定した日々であればコンプライアンス遵守や男女平等、ハラスメント禁止!と相手を思いやる優しさが行き交うわけだけど。

 

友人の会社内でコロナの濃厚接触者がでたと社内メールで知らせがあったとのこと。

 

そこから社内の雰囲気は、コロナ濃厚接触者がいるという非日常により、ジンワリと知性ある人間が、線引きをするような動きをするというのだ。

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ヒソヒソ…。

 

「この濃厚接触者って誰だ?」

 

ヒソヒソ…。

 

「4階の〇〇さんらしい…」

 

ヒソヒソ…。

 

「やばい。昨日〇〇さんと話してしまった…」

 

 

ヒソヒソ…。

 

「4階にはしばらく行かないでおこう。」

 

 

 

社内メールでは会社内で濃厚接触者がでたという話だけだったが、犯人探しに、フロアー差別と、瞬く間に動きがあるという。

 

そしてゆっくりとその行動から人の心が見え始めていくのだ。

 

 

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「〇〇さんってタバコ吸うらしいよ」

 

「えー!じゃあ喫煙所使ってる△△さんもコロナの疑惑あるじゃん!」

 

「俺ら帰省自粛になるのかな?」

 

「年末なのに最悪…」

 

「4階の人とすれ違う時は、息を止めちゃった笑」

 

「てか、会社のコロナ対策甘すぎない?」

 

…。

 

…。

 

 

社内に送られたメール1つで、人の動きや集団の考えが変わっていく。

 

いや、変わったのではないかもしれない。

人が潜在的に考えていた事が、普段は隠しているのに、メール1つのさざ波から波紋が広がり顕在化したのだ。

 

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今はコロナ疑惑で濃厚接触者の方を袋叩きしていくが、きっとこのコロナの濃厚接触者の方が、周りの反応で傷つきメンタルを病んだとしたら、また意見を変えるのだろう。

 

「〇〇さん可愛そう…」

 

「俺はコロナがやばいって思ってたけど、〇〇さんは悪くないって思ってたよ!」

 

「誰?〇〇さんの悪口言ってたの?」

 

「✖️✖️さんがめっちゃ裏で言ってたみたい」

 

状況が変われば変わったで、そうやってまたみんなで犯人探し、噂話が広がっていくような気がする。

 

 

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僕らはつまるところ、とんでもなく暇なのかもしれない。

 

心の中の安定が、危険や悪や汚さを取り込んで、どこかスリリングでサスペンスな人物や世界を作り上げたいのかもしれない。

 

でもそれはあくまで"お話"であって、当人に言いにいくわけではない。

 

あくまで噂で、あくまで壁の向こうで、ヒソヒソと。

 

それは江戸時代の障子の向こうで、AI時代のSNSの向こうで、変わらなく滞りなく本日も行われていることなのかもしれない。

 

 

 

最後までご覧いただきありがとうございます。