ナニモノでもないワカモノ

 

 

その時は、ずっと逃げていた。

 

 

ここはボクが学生時代、将来何をしたいのか分からず苦しんでは、逃げ場にしていたある広場である。

 

その広場に昨日訪れた。

 

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就職を目の前に控えた学生時代。

まだナニモノでもないワカモノ時代の頃。

 

周りのみんなは、自分のしたいことを簡単に見つけて、社会人になっていく。みんなしっかり自分自身のことを考えていて、次にあるべき姿へ向けて進んでいく。

 

取り残されてしまった。

ボクは何も自分自身のことを考えていなかったのだ。

 

 

 

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「社会のレールに乗れない。」

その事実がとんでもなく不安であり負担であった。

 

押しつぶされそうな日々の中、この広場のベンチに座り、同じ境遇であった友人と延々話をしていたのを覚えている。

 

でもそれが、ビートルズは何の曲がいいとか、ミスチルの桜井さんのパロディ曲を作ったりとか、Radioheadのthere thereはやっぱりすごいとか…。

 

広場は月しか見えなくなるぐらい暗くなっても音楽の話ばかりをしていた…。

大好きなものなのに決して楽しいわけではない。頭の片隅では就職を考えないといけないけれど、向き合いたくない…。

大好きなもので頭をパンパンにしたかったのかもしれない。

 

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そんな現実逃避をしながらも、結局はその後、ボクらは片っ端に会社へ履歴書を送っていく。

自分は何がしたいかより、社会のレールに乗ることが最優先…。そうやって行動してる方が、この広場で話しているより、実は何百倍も気持ちが楽であった。

 

とりあえず考える前に動く。

レールに乗ることだけを正義に…。

 

そうやって行動していると、ふと周りのみんなのことも考えたりする。

 

「ホントは社会全体、みんな、自分自身のことをわかっているわけではなくて…ただ次にあるべき場所に来たから、次にあるべき姿へ向けて、とりあえずみんな、進ませているだけなのでは?」

 

でもそんな疑問、そんな考えは関係ない。

とりあえずボクはどうするべきなのか。

とにかくレールへ…。

とにかく必死で走り回っていた。

 

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この広場に今いること。

来たいと思えたこと。

 

当時の自分たちの会話は、現実逃避でしかなく何にもならないように思えたけど、実はそんな時間が大切な時間であったと、今では強く感じてたりする。あれだけ苦しい時間であったのに、そこにホントの自分がいたような気がするのだ。

 

あの後、乗ることができた社会のレール。

幸せの一本道に繋がっているように思えたけど、レールから完全に外れたこの広場の方が、レールから見える景色より遥かに多くのことを教えてくれてる気がする。

 

 

 

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