家、1周分の旅

 

子どもを抱いて玄関の外へでる。

まだ新生児だから家の周りを一周回る程度の小さな旅だけど。

 

少しずつ外の空気にもふれてほしくて、僕が休みの日は、子どもを抱いて外に出るようにしている。子どもは部屋の中にずっといるのですべてが新鮮だ。

 

 

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昼下がりの住宅街は、大部分が陰でべっとりしている。

 

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それでも家と家の隙間から日差しが漏れていて、その日差しが子どもの顔にかかるたび目をぎゅっと瞑り、また屋根の下の影に入るとこちらに嫌そうな目を向ける。

 

冷たい強い風がビューっと吹くと、お包みの中でぐっすり眠った顔をする。冷たい風が吹きやむと、またチラリと目を開く。

 

日差しのない、風もない、穏やかな道に差し掛かると子どもは、じっと街の様子を伺ってる。興味があるようにジロジロ見るわけではなく、散歩で流れていく道を一点、目で追いかけずただ見ているのだ。

 

 

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そんな散歩をしていると、日差しや風だけでなく人とも出くわす。

 

「あら、赤ちゃんだ。」と僕の母親ぐらいの女性が笑顔で話しかけてきた。

「こんにちは」と僕も自分の子どもを使ってニコニコあいさつを返す。

 

そのままお互いは通り過ぎるけど、よく考えたら、路地で声をかけられたのは初めてかもしれない。

 

子どもは、いつもの日常さえもどんどん様変わりさせる力を持っているようだ。

 

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普段なら気にも止めないことが、子どもが一歩外に出るだけで、僕自身の歩き方も変わっていく。

 

転んだら大変なので小さな段差でもできるだけよけて歩いたり、曲がり角では急には避けれないから、耳をすまして人や車が来ていないか聞いていたり。

 

目をつぶっても歩けるだろう家一周分の道が、子どもがいるだけで大冒険だ。あらゆる所に罠があり、出会いがある。

 

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休みも終わり今日も会社へ向かう。

 

自転車を漕いでいると、至る所に、影から日向が漏れている。

きっと僕の子どもが通ると眩しくて嫌な顔するんだろうなぁと思い浮かべながら、すっかり街の見え方が変わっているのだ。

 

 

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