特別な試合
自分自身が禁煙を始め現在も続けれていることは、僕にとって今も特別な試合で戦い続けていることを意味する。
誰もが(100%自分だが)もう諦めて苦く微笑んだ試合に、僕1人諦めてなくて、ロングシュートを決めようとしている姿勢だ。
この試合中はなんども禁煙を始める瞬間を思い出す。
それは大袈裟でなく、文化系の僕にとって熱い汗が迸る青春時代の幕開けなのだ。
喫煙時の生活
当時(喫煙時の僕)は腹が減ってなくても何となくお菓子を食べ続け、寝むたくなくても寝る。
ベランダに出てタバコを吸いながら漠然と「変わらないこのまま」がヤニと一緒に蓄積され、いつのまにか「変えられないこのまま」となっている、そんな思考に染まり自信を失った生活であった。
いつかやる
腹が出てきても、貯金がたまらなくても、「いつかやる」と頭で考えることで、その場は、その責任を負わないようになっていた。
それがシンプルにストレスを抱え込まないスタイルであり、あくびが枯れるぐらい暇な日々は続いても、とにかく寝て、夜に酒を飲み、それ以上の幸せを考えることはなかった。
いやそれ以上を求めても「いつかやる」と考えることで今のやる必要性をなくしていたのだと思う。
そんな日々が続く中で、ぼくの人生の転換点が訪れる。それはインフルエンザによる9日間の自宅休養であった。
自宅での休養
インフルエンザというが、僕自身そこまでしんどくなく、自宅休養が2日目あたりで元気になっていた。
家にいてもやることがない。
とりあえず、漫画やテレビを何十時間も連続で楽しむ。
いつも仕事で追われていてできなかった娯楽が思う存分できる!
本当は、毎日暇だったはずなのだが、「時間の縛りがない」という一点だけでとにかく楽しい。深夜になっても眠る必要がないし、朝になっても起きる必要がない。
自宅休養のため外に出れないが自由だ。
社会人や学生が働き、勉強をしている時間に、ぼくはベッドの上でマンガを好きなだけ読んだ。
そんな束の間の幸せを味がなくなるぐらい母乳のように吸っていた。
人生を変える哲学
そんな同じような生活を数日繰り返していた自宅休養のある日、漫画を読みながら、ふと頭の中で哲学的な思考がぼんやり浮かんできた。
「…俺の幸せってマンガ読んでテレビ見ることなんかなぁ…」
ギギギ
あまりに脆弱でか細い疑問ではあったが、けれでも確かに存在する突きつけられた現実であった。
そしてその疑問に気づくと瞬く間に思考が次の思考、次の思考を生み出してくる。
「こんな誰でも読める漫画を読むために頑張ってストレスを抱えながら働いているのか?」
「なら仕事をやめて漫画喫茶にこもりマンガを好きなだけ読んだら幸せなんじゃないか?」
「今の自分は幸せなのか?否!幸せなわけがない!では、なぜ幸せではないのか?」
思考が次々に形を変えて、漫画が読める状況ではなくなった。
積み重ねてきた「いつかやる」の負債の壁がいよいよバランスを崩したのだ。
本来の幸せとはなんなのか?
自分の足で人生を歩んでいく理想と、漫画を読むことしかできない現実とのギャップに、大きな歪みがおきた。
そのくっきりと残した切れ目から「今」に向き合わなければならない「ボク」と「僕」の目があった瞬間であった。
そしてボクが僕に話しかけるのである。
裏切ってきた僕、裏切られたボク
ボク
『お前何にも積み重ねてきてこなかっただろう?』
僕
「え?」
ボク
『社会人として学生として年次は上がってきたかもしれない。年齢を重ねてきたかもしれない。でもお前自身は何にも積み重ねてないだろ?』
僕
「…え??」
ボク
『いつかやる、いつかやるって。もうお前自身、お前を信じてないんだよ。
どうせ口だけでやらない自分って自分が評価してしまってるんだよ。だから何にも変わらないし変えられない。
そしてその事実が、全部自分のせいだと思うと自分の価値自体無いように思えるから、また「いつかやる」って未来の自分に責任を押し付けているんだ』
僕
「あ、いや」
ボク
『でももう限界だろ?これ以上嘘つかずに、やってみろよ。過去の自分の責任、全部今の自分で向き合えよ。』
僕
「で、でも、なにから始めたらいいか…」
そこに手元にあったのが加熱式電子タバコであった。いつかやめると誓ったことが、まさに今突きつけられたように感じた。
ボク
『これ以上、未来に責任を押し付けるな』
禁煙のはじまり
そこから漫画を読むのをやめ禁煙動画を見まくった。吸いたくなったら禁煙動画を見て、ニコチンとの戦いが始まった。
でもこれは、禁煙をしたいというより、信頼を裏切ってきた自分に対して、もう一度自信を取り戻したかったのだと思う。
ニコチンが脳を刺激し、タバコを強烈に思い出させるたび「また禁煙はいつかにしようかなぁ…」と弱気になる。
それでもここで吸ってしまったら、また元どおりになるのだ。
この時のそして今でもそうだが、自分に必要なのは、「積み重ねる日々の価値」であった。
そして禁煙は、わかりやすいぐらい禁煙日数として、価値を僕に与えてくれたのだ。
禁煙日数
禁煙を思い出す度、自分の初心を思い出す。アプリで禁煙日数をみると今日で540日となっていた。
禁煙日数がいつの間にか、自分自身の走り続けた日数に変わっている。
走り続けて540日目。
時折この禁煙の瞬間を思い出す。
それは僕にとって初めて自分に打ち勝てた瞬間であり、そこから生活が大きく変わった。
人間小さな勝利がその後大きく人生の転換点になることがある。
もし何か行き詰っていることがあり少しでもご参考になれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございます!